マッチングの自己分析は、性格をきれいに説明するためではなく、自分が初期研修で譲れない条件を決めるために行います。
最初から志望病院を1つに決める必要はありません。自分の希望を言葉にし、条件に優先順位をつけ、病院見学で確かめ、同じ表で比較してから志望順位を考えます。
- 自己分析で希望と避けたい条件を書き出す
- 条件を「必須・できれば・気にしない」に分ける
- 病院見学で事実を確認する
- 比較表へ同じ項目で記録する
- 受験先と志望順位を決める
この記事では、この5段階を実際に手を動かせる形で解説します。マッチング全体の時期を先に確認したい方は、5年生・6年生別のマッチング対策ロードマップもあわせて確認してください。
1. 自己分析で「したい研修」と「避けたい状態」を書き出す
まずは病院名を見ずに、初期研修の2年間で経験したいことを書きます。診療科が決まっていなくても、「救急の初期対応を身につけたい」「手技を繰り返したい」「相談できる指導医がいてほしい」のような具体度で十分です。
同時に、続けにくいと感じる状態も書きます。たとえば「質問できる相手がいない」「見学時と実際の役割が違う」「生活との両立が難しい」などです。魅力だけでなく避けたい状態を明らかにすると、見学で確認すべきことが具体的になります。
| 振り返る問い | 書き出す内容 |
|---|---|
| 2年後にできるようになりたいことは? | 救急初期対応、手技、患者説明など |
| どんな教わり方が合う? | まず見本が欲しい、自分で動いて相談したいなど |
| 何が続くとつらい? | 放置、過度な競争、休日の少なさなど |
| 生活面で外せないことは? | 勤務地、通勤、勤務日、家族との調整など |
2. 条件を「必須・できれば・気にしない」に分ける
条件を書き出したら、すべてを同じ重さで扱わないことが大切です。各項目を次の3段階に分けます。
- 必須:満たさない病院は受験・順位登録の候補から外す条件
- できれば:満たせば加点する条件
- 気にしない:他の条件がよければ妥協できる条件
優先順位は、他人の正解ではなく自分が2年間続けるための判断基準です。給与や知名度を重視しても構いませんが、「なぜ自分に必要か」を一文で説明できる状態にします。
2023年度、私が病院選びで置いていた軸
ここからは一般的な正解ではなく、2023年度に私がマッチングへ参加した当時の経験です。埼玉県内を中心に約10病院を見学し、約4病院を受験しました。見学を進める間は「ここなら働きたい」と思う第1志望が3病院あり、1つへ早く絞るより、比較できる候補を残していました。
当時の主な軸は、平日のみを基本に研修できること、手技の多さ、研修医同士の仲、救急で研修医がファーストタッチを担えること、2次救急、質問や振り返りができる指導体制、地方で地域研修を経験できることでした。
また当時は、専攻医がいない方が初期研修医へ手技が回りやすいと考えていました。一方、現在は、近い目標になる専攻医がいて、初期研修の次の段階を具体的に相談できることにも利点があると感じています。「専攻医がいるか」だけで決めず、誰がどの手技を担当し、初期研修医がどこまで関われるかを確認する方が実用的です。
3. 病院見学で、自分の軸を事実に照らして検証する
自己分析で作った軸は仮説です。病院見学では、ホームページの説明と現場の運用が一致しているかを確かめます。「雰囲気が良かった」で終えず、見た場面・聞いた回答・自分が感じたことを分けて記録しましょう。
| 軸 | 見学で確認すること | 質問例 |
|---|---|---|
| 救急ファーストタッチ | 研修医が最初に診察する症例と上級医へ相談する流れ | 初診から振り返りまで、研修医はどこを担当しますか |
| 手技 | 初期研修医・専攻医・上級医の分担 | よく担当する手技と、任されるまでの流れを教えてください |
| 指導体制 | 相談相手、フィードバックの頻度 | 当直後やローテート中の振り返りはありますか |
| 研修医の仲 | 忙しいときの助け合い、質問のしやすさ | 困ったときは誰に相談することが多いですか |
| 地域研修 | 派遣先、期間、経験できる役割 | 地域研修ではどのような診療を担当しますか |
質問を準備するときは、病院見学で聞くべき質問20選から自分の軸に合うものだけを選びます。人間関係を一日の印象だけで決めないためには、初期研修病院の雰囲気を見極めるポイントも参考になります。
見学直後は記憶が新しいうちに記録してください。具体的な残し方は、病院見学でメモすべきことで確認できます。
4. 比較表は、全病院を同じ項目で評価する
見学先ごとにメモの形式が違うと、最後に比較できません。行に病院名、列に自分の軸を置き、事実と感想を短く残します。点数だけでなく、その点数にした根拠も書きます。
| 病院 | 救急 | 手技 | 指導 | 雰囲気 | 地域研修 | 気になった点 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A病院 | 研修医が初診 | 分担を確認 | 毎回相談可 | 助け合いあり | 派遣先あり | 土日の勤務を再確認 |
| B病院 | 上級医と一緒 | 専攻医と分担 | 週1回振り返り | 落ち着いている | 期間が長い | 通勤時間が長い |
比較表を作ると、1つの強い印象だけで順位を決めにくくなります。見学後の整理方法は、初期研修病院を比較するチェックリストも活用してください。
5. 比較表から受験先と志望順位を決める
受験先を決めるときは、まず必須条件を満たさない病院を確認し、その後に「できれば」の項目で差をつけます。すべての項目で1位の病院を探すのではなく、自分が重く置いた条件を満たす病院を上位にします。
見学中に第1志望が複数あっても問題ありません。2023年度の私も第1志望と感じる病院を3つ持ったまま比較し、最終的に約4病院を受験しました。見学前に決めた軸が、実際に働くイメージを持った後でも重要かを更新しながら順位を考えました。
順位をつけたら、上位病院について「自分の軸」「見学で確認した事実」「その病院で経験したいこと」を一続きで説明できるか確認します。志望理由へ文章化するときは、自己分析から志望理由を作る手順へ進んでください。
自己分析でよくある3つの失敗
条件を増やしすぎる
条件が10個以上あっても、すべて必須では比較できません。まず必須条件を3つ程度に絞り、残りは加点条件にします。
有名・人気という評価を自分の軸に置き換えない
人気病院であることと、自分が希望する経験を積めることは別です。症例数、担当範囲、指導の流れなど、見学で確認できる言葉に置き換えます。
一度決めた軸を変えない
見学をすると、重視したい条件が変わることがあります。これは自己分析の失敗ではありません。判断理由を記録したうえで優先順位を更新すれば、むしろ比較の精度が上がります。
まとめ:自己分析は、見学と比較で更新する
マッチングの自己分析は、考えて終わる作業ではありません。
- 希望と避けたい条件を書き出す
- 条件に優先順位をつける
- 見学で事実を確認する
- 同じ比較表へ記録する
- 受験先と志望順位を決める
まずは「初期研修で必ず経験したいこと」を3つ、「続けにくいと感じる状態」を3つ書き、次の見学で確かめる質問へ変えてみてください。
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